その見出しというのが「このままでは「一億総前科者」になる…「家族でもETCカードの貸し借りは犯罪」大阪地裁が下した判決の大問題」https://president.jp/articles/-/85105
ETCカードの貸し借りをおこなった同居の兄弟と、そのカードで車を運転した知人の計3人が、いずれも「電子計算機使用詐欺罪」(刑法246条の2)で起訴され、有罪になったというのです。(中略)
特に悪気もなく、日常的に行っていることが「罪」に問われてしまうとなると、決して他人ごとではなく、さすがに不安になりますね。では、3人がそろって有罪となったこの「事件」、いったいどのようなものだったのでしょうか……。2024年5月8日に下された大阪地裁判決(裁判官/末弘陽一・高橋里奈・高矢輝乃)の内容を振り返ってみたいと思います。(中略)
https://president.jp/articles/-/85105
判決内容は以下の通りだとしてます。
〈被告人3名は、a株式会社が有料道路の料金所に設置したETCシステムを利用するに際し、ETCカードの正当な使用権限を有する者が乗車する場合に通行料金が割引されるETC利用割引の適用を不正に受けようと考え、共謀の上、C(弟)名義のETCカードを挿入したETC車載器を搭載した普通乗用自動車を、B(知人)が運転し、A(兄)が同乗して、2度にわたって正規の通行料金との差額の財産上不法の利益を得た〉
そして、次のように判決内容を要約しています。
ようするに、兄が弟名義のETCカードを借り、知人の運転する車(弟は乗車していない状態)でそのカードを使って有料道路を通行し、ETC割引によって通行料の差額を不当に得たことが「罪」にあたるというのです。
1つ目の「犯行」は、2023年11月、大阪市内の有料道路をCが乗車していない車にC名義のカードを挿入して約9分間走行し、ETC割引を使って「正規の通行料金との差額770円相当の財産上不法の利益を得た」というもの。
2つ目の「犯行」は、同年12月、同じくCが乗車していない車にC名義のカードを挿入して大阪市内の有料道路を約11分間走行し、「差額630円相当の財産上不法の利益を得た」、
つまり、2回の走行で合計1400円をだまし取った、という罪に問われたことになります。
判決文の最後には、「本件は、常習的に行われた一環の犯行であり、悪質である」
と記され、兄のAには懲役10カ月の実刑、カードを貸した弟のCと運転していた知人のBには、それぞれ懲役10カ月・執行猶予3年の判決が下されました。ちなみに、兄のAは暴力団関係者でした。暴力団はクレジットカードを作ることができないという事情もあって、弟名義のETCカードを借りていたとみられます。捜査機関は「反社条項(暴排条項)」を意識していた可能性もありますが、罪名はあくまでも「電子計算機使用詐欺罪」だったのです。
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そして、有識者の話として次のように続けています。
立命館大学大学院法務研究科の松宮孝明教授は、今回の判決についてこう語ります。
「Aがこの裁判で実刑になったのは累犯前科があったためですが、そもそも今回の起訴は、警察や検察のさじかげん次第という感が否めず、さすがに看過できなかったため、私も法的見解を意見書にまとめて裁判所に提出しました。現在、弁護団は控訴の手続きをして、大阪高裁の判断を待っているところです」
そもそも、同居の家族のETCカードを借りて走行することが、なぜ罪になるのでしょうか。
お分かり頂けたと思います。
「同居の家族のETCカードを借りて走行すること」が問題なのではなく、
「2回の走行で合計1400円をだまし取った、という罪に問われたこと」が問題のはずです。
「a株式会社が有料道路の料金所に設置したETCシステムを利用するに際し、ETCカードの正当な使用権限を有する者が乗車する場合に通行料金が割引されるETC利用割引の適用を不正に受け」たのが起訴につながったと考えるのが妥当だと思いませんか?
「電子計算機使用詐欺罪」なんですよ。「本件は、常習的に行われた一環の犯行であり、悪質である」んですよ。単純に「ETCカードを貸し借りしていた」だけではないのですよ。
法人は、高速道路の料金を割引して利用できます。コーポレートカードとか、いくつか種類があります。ここから先は想像になりますが、例えばこのコーポレートカードを個人的に借りて高速道路に乗り、料金を不正に安く支払っていたとしたら罪になるよ、という話だと考えます。
だって詐欺だし。
で、割引がない一般的なETCカードを家族間で貸し借りした時で、正規の通行料金を支払っていた場合、詐欺になるのか?という疑問がでてくるのですが、その事に関しては触れられていません。でてくるのはタイトルの「一億総前科者」になる…「家族でもETCカードの貸し借りは犯罪」なんです。
いや、ならんやろ。一億総前科者には(笑)。カードの名義は違えど支払いはちゃんとしてるし。NEXCOには損害与えてないしね。あ、でも注意はされるかも知らんけど。
個人的に、こういう不安をあおるネット記事って、ハラ立つんですよ。
ちなみに今回のネット記事を書いたのは「柳原 三佳(やなぎはら・みか)」となってます。
柳原 三佳(やなぎはら・みか)
ジャーナリスト・ノンフィクション作家1963年、京都市生まれ。ジャーナリスト・ノンフィクション作家。交通事故、死因究明、司法問題等をテーマに執筆。主な作品に、『私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群』(講談社)、『自動車保険の落とし穴』(朝日新書)、『開成をつくった男 佐野鼎』(講談社)、『家族のもとへ、あなたを帰す 東日本大震災犠牲者約1万9000名 歯科医師たちの身元究明』(WAVE出版)、また、児童向けノンフィクション作品に、『泥だらけのカルテ』『柴犬マイちゃんへの手紙』(いずれも講談社)などがある。■ウェブサイト
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